あ はっぴぃ にゅう いやぁ
「Happy New Year♪ みんな集まってくれてありがとう。今日は、昔のように仲間同士の関係に戻って楽しんで行ってね〜!」
セリスのそんな挨拶で、バーハラ城では新年のパーティー&解放軍の同窓会(?)が始まった。
集まった者達の殆どは、公式の場では各国の指導者として振る舞わなくてはいけないと言っても、やはりまだまだ大人になり切れない年頃の青少年である。久しぶりに会う幼馴染みや友人達と気軽に話せる機会に恵まれて嬉しくないはずはなかった。たちまちパーティー会場は賑やかになり、雰囲気は大いに盛り上がって行った。
しばらく皆が自由に楽しんだ頃を見計らって、セリスが再び高段に上った。
「みんな楽しんでるか〜い? ここらでそろそろ余興と行こうか。」
全員、一斉にセリスに注目した。
「やっぱり余興と言えば、女装コンテストだよね〜。恋人のいる人は全員強制参加。他にも希望者が居れば名乗り出てね〜。」
「ちょっと待て!」
セリスの発言に真っ先に異を唱えたのはアレスだった。
「何で恋人がいると強制参加なんだ?」
アレスはもちろんのこと他の者も、それって実は独身であるセリスの嫌がらせじゃないのか、と思った。
「参加者は多くなきゃ面白くないし、かと言って見苦しいものは見たくないしね。」
恋人がいる=女性のサポートを受けられる。これにより、見苦しいものは見なくて済むという公算大だ。
「冗談じゃない。そんなふざけた余興なんか…。」
「ちなみに、優勝賞品は米・味噌・小麦粉1年分にグランベル漬の頒布会付き。」
「ナンナ、俺を絶世の美女に仕立て上げろ!!」
賞品が出ると聞くなり、アレスはあっさり主張を翻した。
しかし、賞品に釣られたのはアレスばかりではなかった。
「姉上!」
「リーフ!」
「私も参加したいので協力して下さい。」
「私がサポートしますから貴方も参加なさい。」
レンスターの姉弟も賞品に目が眩んでいた。ほぼ同時に向き合って言葉を掛け合うと、しっかりと手を取り合い、それからセリスの方を向いた。
「セリス様、私も是非参加させて下さい。」
「うん、歓迎するよ、リーフ。それじゃ、参加者はユリアの案内に従って支度して来てね。」
他の者は異を唱える隙もなく、大人しくユリアについて会場を後にした。
ユリアは城の一角へ皆を案内して行った。
「こちらに服やアクセサリー、化粧道具などを用意してあります。支度はそちらの部屋をお使い下さい。」
ユリアの指し示した支度部屋の扉には、それぞれ参加者の名前が張られていた。そこには、リーフの名前もある。
「…どうして、私の名前が張られているのでしょう?」
「セリス義兄様が、「リーフも参加するよ、絶対♪」と仰ったので、御用意させていただきました。」
さすがはセリス、リーフの性格をよく読んでいる、と一同は感心した。
「他に御質問は? なければお支度に取りかかって下さい。何かございましたら、私はスカサハの支度を手伝っておりますので、お声を掛けて下さいませ。」
そう言うと、ユリアはスカサハの手を引いて衣装部屋へ入って行った。