あ はっぴぃ にゅう いやぁ

〜レスターの支度風景〜

「レスター、何色が好き？」
「青。」
パティは青い服を何枚か残して残りを衣装ハンガーに戻した。
「パンプスとブーツではどっちが好き？」
「…ブーツ。」
今度は、ブーツに合う服を残して残りを戻す。
「レスター、そっちでブーツのサイズ合わせて。あたしはアクセサリー取ってくるから。」
「ついでにかすめ取ったりするなよ。」
「しないわよ。後が怖いもの。」
後が怖くなきゃやる気か、と心配になったレスターだったが、口ではそんなことを言ってもそれなりに分別はあるから大丈夫だろうと思い直してブーツを選びに行った。

支度部屋を仕切るカーテンの奥で、レスターはパティが選んだ服と自分で選んだブーツを身に着けた。
「う〜、何か落ち着かない。」
「そりゃそうでしょうね。でも、コンテストが終わるまでの我慢だから…。」
「わかってるけどさぁ。どうせ俺なんかじゃ優勝出来そうにないと思うぜ。」
「それは、そうかも知れないけど…。」
兄に比べれば線が細いようだがレスターだって結構男らしいし、優しげな顔立ちだが目の覚めるような美男と言う訳でもないし。恐らく、優勝を狙うのは無理だろう。
「でもさぁ、あまり期待されないだけに上手く仕上がればセリス様が金一封くらい出してくれるかも知れないよ。」
「確かに、セリス様ならあり得るな。」
まだ、ヴェルダンには時々山賊が出没する。討伐に使用した武器をその金で直した場合、それで増えた使用可能回数の分から得られる収入はかなり見込める。
そうして稼いだ金で国内の景気を良くすることも出来るし、他国に貸し付けて利息を得ることも出来る。グランベル領内の公国に貸し付ければ、最悪の場合はセリスが立て替え返済してくれるし、そんなことになったらヤバいと誰もが思っているから皆ちゃんと返済してくれる。
「よ〜し。もしかしたら出るかも知れない金一封の為に頑張るか！」
「出さぬなら出させて見せよう金一封、の心意気でセリス様にアピールよ♪」
ささやかな野望に燃えながら、レスターはパティの協力で身支度を調えていった。