あ はっぴぃ にゅう いやぁ

〜リーフの支度風景〜

「いいですか、リーフ。絶対に優勝賞品を持ち帰るのですよ。」
「はい、姉上。絶対に米・味噌・小麦粉1年分を我が国のものに致しましょう!」
「リーフ、グランベル漬の頒布会も忘れてはなりません。」
やたらと盛り上がる姉弟に、同じ部屋でアレス用の服を物色していたナンナは溜息をついた。
「はぁ〜。リーフ様はともかく、どうしてアルテナ様まであんなに必死になるのかしら?」
もしここにハンニバル将軍がいたら、きっと答えてくれただろう。トラキア育ちですからな、と。
王族でさえ贅沢は許されないトラキア。外貨と共に竜騎士達が持ち帰る食材が、どれほど貴重なものであったことか…。
ナンナが出て行った後も、アルテナとリーフは燃えまくりながら服を吟味し、納得のいくものを選んで支度部屋へ向かった。
部屋の中を仕切っているカーテンの陰で着替えたリーフが出てくると、アルテナは厳しくチェックを入れた。
「何ですか、その着こなしは!」
リーフを一喝すると、アルテナは直立不動となったリーフの服を引っ張ったり撫でつけたりして整えていった。当然、リボンも結びなおす。
「さぁ、ここにお座りなさい。」
大人しくリーフが鏡の前に座ると、アルテナはてきぱきとリーフに化粧を施していった。
「問題は髪型ですね。」
可愛らしく結い上げるには、リーフの髪は短い。しかも、猫っ毛すぎる。
「やはり、このカツラを被りなさい。」
「え〜、暑いし重いのに〜。」
「食材の為です。我慢なさい!!」
リーフ以上に賞品に目が眩んでいるアルテナは容赦がなかった。
観念したリーフがロングのストレートヘアのカツラを被ると、アルテナは可愛い髪飾りをつけて仕上げとした。
「ちょっと、そこを歩いて御覧なさい。」
ハイヒールを履いたリーフが言われた通りに歩き出すと、途端にアルテナのチェックが入った。
「そんなグラグラ歩いてどうするの。もっと軽快に、もっと愛らしく歩きなさい!」
「そそそ、そんなこと言われても…。」
リーフは慣れないヒールによたよたしながら、軽快に歩こうと努力した。
「そんな歩き方で優勝できると思ってるの?」
アルテナの厳しい指導に、リーフは必死にヒールの感覚に慣れようとした。
「そんなことでは、アレスに食材を奪われますよ。それでもいいの?」
「嫌です!!」
ナンナを奪われたのみならず目の前で食べ物まで持って行かれてなるものか、と俄然張り切り出したリーフは、マスターナイトにもなれた程の器用さを発揮し、瞬く間に軽快なステップが踏めるようになった。

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