あ はっぴぃ にゅう いやぁ
〜ファバルの支度風景〜
「服はこれで、カツラはこれ、っと。」
「なぁ、ラナ。」
さっさと服を決め、髪型を決め、ラナは次々とファバルに荷物を持たせた。
「靴はこれで、アクセサリーは…これがあれば充分ね。」
「おい、ラナ。」
口を挟む間もなく次々と増えていく荷物に、ファバルは苦情を申し立てようとしたが、ラナは聞く耳を持たなかった。
「それでは、支度部屋へ行きましょうか。」
聖母の微笑みと呼ばれる、一切の反論をねじ伏せ全てを有耶無耶にして自己正当化をする笑顔を向けて、ラナはファバルを従えて支度部屋へと向った。
支度部屋を仕切るカーテンの奥でファバルはラナの選んだ服に着替えると、間もなく出て来た。
「次はここに掛けて。」
「あ? ああ。」
にこやかに笑みを浮かべた表情をしているラナには逆らってはいけないということが身に染みているファバルは、大人しく言われた通りにした。
何だか妙に楽しそうにしてるなぁ、と訝しんでやっと気が付いた。ラナはあのセリスと一緒に10年以上も暮らして来たのだ。しかも、エーディン叔母さんに育てられて、一番近くにいて、その上今も四六時中一緒に居る。
「楽しいか?」
「ええ。こんなこと久しぶりだわ。昔はよく、母様と一緒にセリス様にお化粧して遊んだんだけど…。」
「…そ、そうか。」
聞くんじゃなかったぜ、と後悔してももう後の祭り。
母様は戦闘の合間に父様やシャナン様やオイフェさんにもお化粧して遊んだらしいとか、平和だった頃はシグルド様にもやったことあるとか、キュアン様達のガードが固くてフィンさんには出来なかったのを悔しがってたとか、次から次へと聞きたくないような話が流れ出した。
「はい、お化粧終わり♪ これ被ってもらえるかしら?」
嫌だと言ったら止めるつもりがあるのか、と問いたい気持ちを押さえてファバルは金髪のカツラを被った。
ラナは、カツラの座り具合を落ち着かせると白いヘアバンドを着けさせた。
「さぁ、それじゃイチイバルを持って会場へ行きましょう♪」