あ はっぴぃ にゅう いやぁ

〜デルムッドの支度風景〜

「あぁ、もうっ。どうしろってのよ、まったく。」
リーンはドレスの前で溜息を付いていた。
観客に対して自分を綺麗に見せる方法なら詳しいが、あのデルムッドを女性に見せる方法なんて…。
「せいぜい見苦しくなく仕上げないと…。」
いくら相手が最愛の夫とは言え、否、だからこそ見苦しい女装姿は見たくない。
「顔はメイクで誤魔化すとして、問題はあのヤンキーな頭と半端に筋肉の付いた身体かぁ。」
頭もカツラという手があるが、身体つきはドレスのデザインで誤魔化すしかないだろう。
そんな訳で、リーンはドレス選びには困窮していた。

散々悩んだ末に荷物をたくさん抱えて戻って来たリーンは、愚痴るデルムッドを叱り飛ばしてドレスに着替えさせた。
「一応、着たけど…。」
「それじゃ、そこへ座って。」
さっさとメイクしてカツラを被せないと…無気味なものはあまり見ていたくない。
リーンはてきぱきとメイクを施し、カツラを被せてホッと一息ついた。
「何とか、見られるようになったわね。」
「なぁ、リーン。俺には優勝なんて無理なんだしさぁ、そうまで一生懸命にやる意味ないんじゃないか?」
見苦しくないとは言え、こんな女装でデルムッドが優勝できるとはリーンだって思ってないが、とにかく参加させられるからにはちゃんと仕上げない訳にはいかなかった。
「文句があるなら、セリス様に言ってよ。わたしだって、喜んでこんなことしてる訳じゃないんだから。」
「…ごめん。」
大人しくなったデルムッドに、リーンはベールにも似たリボンのついた帽子を被せた。これで少しでも顔を隠そうという狙いである。
「出来たわ。後はデルムッドの努力次第ね。なるべく俯き加減で小股に歩いてちょうだい。」
「わかった。」

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