After War(シレジア&フリージ編)
そうして、2年の月日が流れた。
スカサハとユリア皇女の結婚式がバーハラで行われることとなり、聖戦士達は皆、久しぶりに集結した。中には、子供を連れて来た者もおり、短いようで長かった月日を実感させた。
セティとティニーは2年ぶりに再会したが、なかなか二人きりになれなかった。何しろ、表向きは挙式に参列するために訪問した各国代表者である。当然、扱いもそれなりで周りにはそれぞれ世話役やらお供やらが付いてくる。挙式が始まれば彼等は消えるが、式の最中に話し込むわけにもいかず、パーティーが始まるのをじっと待つよりなかった。
そして挙式後のパーティー会場へ向かう中、セティはティニーに声をかけようとしたが、式場から出たとたんに横からシャナンとアレスに腕を掴まれて連れ去られてしまった。
じたばたともがくセティが連れ込まれた先は、衣装部屋だった。そこには、今日の主役の一人であるはずのスカサハと、リーフとコープルが待っていた。
「それじゃ、後は頼んだぞ。」
シャナンはそう言うと、アレス共々戻って行った。
何がなんだかわからずセティが呆然としていると、リーフ達はテキパキとセティの服を婚礼衣装に着替えさせ始めた。更に、やっとセティが我に帰ると、コープルが「ごめんなさい」と呟きながら、スリープの杖を掲げて呪文を唱えた。
目がさめたセティが最初に見た者は、婚礼衣装を身に纏ったティニーの姿だった。驚いて辺りを見回すと、そこは先ほどの聖堂で参列席には聖戦士達が並んで居た。
ラナがレストの杖を片付けて席に付くと、代わりにオイフェが立ち上がってティニーの手を取り、やや後方脇に下がった。それを見てセリスが合図を出した。
「さ〜て、セティも目を覚ましたし、準備も整ったようだから、そろそろ始めようか。」
音楽が鳴り響き、オイフェに連れられてティニーがセティの前に連れて来られると、その手がセティに預けられた。そのまま腕を組んで、祭壇の前まで進んで行く。すると、そこに立って居たコープルが婚礼を執り行いはじめた。
最初は、皆が面白がって遊んでいるのだと思っていた二人だったが、事ここに至ってこれが本物の挙式であることを認識した。幼いながらもエッダの最高司祭であるコープルが、冗談で婚礼を執り行うことなど出来るはずがないのだから。
「それでは、指輪の交換を。」
そう言われても抜き打ちだったから指輪なんて用意してないぞ、と慌てたセティの脇からフィーが指輪のはまったクッションを持って現れた。
「はい、こっちがティニーにあげる方よ。」
セティだけに聞こえるようにそっと囁いたフィーの声に、素早く手元を見て取ると、セティは示された方の指輪を取ってティニーの指にはめた。ティニーも同様にして指輪の交換が終わると、誓いのキスで式が締めくくられた。
「さて、それじゃあ、今度こそパーティー会場へ向かうよ。」
セリスがそう言うと、またしてもアレスとシャナンがセティを捕まえて衣装部屋へ放り込んだ。
「今度はそっちの服だ。」
アレスはそう言い残して、シャナンと一緒にパーティー会場へ向かってしまった。
取り残されたセティはしばらくまた呆然としていたが、とにかく言われた通り、指示された服に着替えてパーティー会場へ向かった。
会場に付くと、ティニーも参列時とは違うドレスに身を包んでいた。
「フィーさんに連れて行かれた先で、着替えさせられて…。」
さすがに、ティニーはセティの様にひとりでモソモソ着替えたわけではなかったらしい。髪型も違っているところを見ると、口を挟む隙を与えない程テキパキと身支度を整えられたのだろう。
「とっても綺麗だよ、ティニー。」
「ありがとうございます、セティ様。」
「こんなところでいちゃついてないで、さっさと奥に行けよ!」
半ば、二人の世界に入りかけたところで邪魔が入った。
続いてゴンッという鈍い音が鳴ると、声の主はフィーに襟首を掴まれて、会場の中へ姿を消した。