続・お星様を見上げて

リーフの章

宴の場へ案内されてすぐ、会場の奥の方でフィン達と一緒にいるナンナの姿を見つけて、リーフは足早にナンナの元へ向かった。
しかし、ナンナの隣に席を取る事は認められなかった。そこは酒席であり、ナンナとパティはお酌係として配置されていたのだ。
少女達にお酌させるなどフィンやオイフェは気が進まなかった。しかしレヴィンが
「宴の席で、いい歳した男だけで飲んでて何が楽しいんだ?」
と我が侭を言ったのだ。まさかそこで他人様の娘に頼む訳にもいかず、フィンはナンナに頼んだのだった。
「嫌なら断ってくれて構わない。」
と言ったのだが、ナンナは「仕方のない方ですね。」と笑いながら引き受けてくれた。
しかし、一人だけではレヴィンが納得しなかった。そこでフィーにも声をかけたのだが「ふざけたこと言わないでよ。」と一蹴された。そして立ち尽くしていたところを通りすがりのパティが立候補してくれたのだ。
何はともあれ、綺麗どころではないお子さまは立入禁止の一画だった。


「リーフ、こんなところで何やってるんだい?」
諦めきれずに大人席の近くをうろついていたリーフを、セリスが捕まえた。
「あ、セリス様。ええっと・・・。」
「君の席はあっちに用意させてあるから、早く行こう。」
リーフが言い訳を考えている間に、セリスはだいぶ離れた場所までリーフを引きずって行ってしまった。
「ほら、飲んで飲んで、食べて食べて。」
セリスの勧めを断りきれず、リーフは注がれたジュースを飲み干し、差し出された料理を口にした。
「この辺のはフィンが作った物だから、リーフの口に合うだろう。」
確かに美味しかったが、リーフは自分が口にできる食べ物や飲み物がなくてもナンナの側に居たかった。
隙を見てリーフは酒席へ向かおうとしたが、あっさりセリスに捕獲されて連れ戻された。
「ナンナの隣に行きたいのはわかるけどね。」
「だったら邪魔しないで下さい。」
「邪魔しない訳にはいかないんだよ。君はまだお子さまなんだから。」
連れ戻されても未練がましくナンナの方を見ていたリーフは、アレスがナンナの隣に腰を下ろすのを見た。
「セリス様、アレス殿が・・・。」
「ああ、彼は構わないよ。」
「どうして私はダメで、アレス殿ならいいのですか!?」
「だって、彼はもう成人してるもの。それに、お酒なんて飲み慣れてるし。」
かく言うセリスも、飲みたければ酒を飲んでも構わないのだが、特に飲みたいとも思わないのでリーフと一緒にジュースを飲んでいた。
「ああっ、ナンナが・・・。」
ナンナがアレスの背に手を回していた。そしてアレスの顔を覗き込んでいる。何やら二人だけの世界を作り上げた挙げ句、嬉しそうに乾杯している。
「ナンナ〜(;_;)」
「いいムードみたいだね♪」
「セリス様!!」
「そう思っただけだよ。」
セリスはリーフがナンナのことを好きだと知っててからかっているのだが、実際かなりいい雰囲気だった。


宴の後、ナンナがフィンを訪ねてきた。
「お聞きしたいことがあるのですけど・・・。」
言い難そうに、小さな声でナンナはフィンに話しかけた。
「どうした、ナンナ?」
「あの・・・ね・・・アレスのお父様って、どんな方でしたの?」
エルトシャン王のことならラケシスからよく聞かされているはずだが、幼い頃のことだし忘れてしまったのかなと思い、フィンはいろいろ話してやった。
しかし、途中でナンナが話の腰を折った。
「その、騎士として王として御立派な方だったことはお母さまからもよく聞かされてました。お姿や気性の激しさも聞き及んでますわ。それで、他には?どんな方でしたの?」
あまり多くの事をフィンは知り得る立場にはなかったのだが、キュアンから聞かされていたことや幸運にも親友同士の語らいの場に同席出来た時の事などを思い返してみた。それと同時に、娘が何故今、何を聞きたがっているのかを考えて、あることに思い当たった。
「普段からポーズを崩すことのない方だったな。少なくとも、人前でワインを咽に詰まらせるような醜態を晒すことなど良しとしない方だった。」
「あの、それって・・・。」
「もちろんお前も聞いてるように曲がったことは大嫌いだったが、いきなり相手に切り付けたりはしなかったし。ああ、それから・・・。」
「お父様っ!!」
「安心したかい?」
クスクスと笑うようなフィンの言葉に、ナンナは真っ赤になって走り去った。


ナンナを見送って少しして、フィンは外に向けて声をかけた。
「リーフ様。盗み聞きなど、未来のレンスター王の為さることではありませんよ。」
「何だ、気付いてたのか。」
リーフはバルコニーからフィンの部屋に入ってきた。
「お前までアレス殿の味方をするんだな。」
「別に私はどちらの味方でもありませんよ。」
不満そうに言うリーフの言葉に、いかにも心外だとばかりにフィンは答えた。
「私は、ナンナの味方をします。」
「では、私の方がナンナを幸せにできるなら、私の味方をしてくれるんだな。」
「はい。しかしながら、何が幸せかを選ぶのはナンナだということをお忘れなく。」
「うん、わかってる。絶対、ナンナを幸せにしてみせる♪」
リーフはまた一段とナンナへの想いを強くした。

-End-

アレスの章へ

あとがき

インデックスへ戻る