pas a pas

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リーフから相談を受けて、セリスはミーズから出撃する前にフィンが描いたアルテナの似顔絵を張り出して周知した。
「攻撃禁止!この顔にピンと来たらリーフ、もしくはフィンかナンナにすぐ知らせること。」
作戦の最終確認でもセリスはそれを繰り返した。そして、横からレヴィンが口を出す。
「セティ、お前は特に注意しろ。」
「はぃ?」
名指しされたセティは、不愉快な顔でレヴィンを見た。
「『フォルセティ』の余波で傷つけるんじゃないぞ。」
「…わかりました、軍師殿。」
反論の余地がなくセティは頷いたが、内心は穏やかではなかった。まるで、皆の前で未熟者呼ばわりされた気分だ。しかし、そんなへまはしないと言い切るだけの自信もなかった。
その感情を表に出してしまったところは、やはり未熟なのだろうか。解散後、心配そうにティニーが寄って来る。
「…すまない、ティニー。私は大丈夫だ。」
不安な顔をするティニーに、セティは微笑んで見せる。
「本当に…?」
「ああ、ティニーの顔を見たら元気が出て来たよ。」
途端にティニーは耳まで赤く染めてオロオロする。その様子を見て大丈夫そうだと思ったフィーは、山向こうの村を解放するため空へと舞い上がった。そして、同じく彼等を眺めていたアレスは、セティの後ろを通り過ぎざまに一言呟いて行った。
「いちいち取りあわないことだな。ムキになって言い返すとバカを見る。」
取りあっていたためにフィンにはめられた経験に裏打ちされた一言はセティの心に重く響き、彼はひとまずレヴィンの言葉を頭から放り出したのだった。

似顔絵まで描いて周知したものの、結局アルテナはまっすぐにリーフのところへ飛んで来た。勿論、セオリー通りに来るなら一番先に遭遇するであろうポイントにリーフ達を配置した結果ではあるのだが…。
「リーフ様!」
「わかってるっ!!」
フィンとほぼ同時にアルテナの姿を認めたリーフは、説得の為に彼女の元へと馬を進めた。しかし、その行く手にはドラゴンライダ−達が立ちはだかる。目の前で部下の血に濡らした剣を持って説得に当たる訳にはいかないリーフは、突っ込んで来る彼等を避けてアルテナに向かって声を張り上げた。
「姉上〜っ!!」
その声は、ドラゴンライダ−達の巻き起こす風に散らされてアルテナの耳には届かない。フィンもナンナも懸命にリーフを守ろうとしていたが、やはり腕を上げてパラディンとしてかなりの経験を積んだとは言えナンナにリーフの護衛は荷が重すぎた。相手を殺さずに済ませるとなると尚更難しい。足留めの為に死なない程度に竜に傷を負わせるなど、そう簡単に出来るものではない。
「くぅっ…!」
自分の身を守るだけでも困難なナンナに、リーフは敵の急所を突こうとする。
「いけません、リーフ様!」
フィンの制止を受けてリーフは辛くも急所を外したが、それ以上先に進むことを躊躇う。そこへ背後から、飛竜の羽ばたきなどものともしない声が聞こえて来た。
「諦めるのか?」
リーフ達3人は、そこに居ないはずの人物の姿を見て驚く。
「諦めるなら、俺が遺恨を断ってやろう。」
二度と悩まずに済むようにアルテナを討ち取ることを仄めかすアレスに、ナンナが食って掛かった。
「何てこと言うのよっ!!」
最前線であること忘れたようにアレスの方へと馬首を向けるナンナと位置を変わるようにしてアレスはナンナの背後を突こうとした敵の飛竜の片翼を斬り飛ばした。
「あっ…。」
状況を認識したナンナは己の愚かさを覚り恥じ入ったが、アレスは彼女に礼や謝罪を口にする暇を与えなかった。
「取り返すのではなかったのか?」
「…取り返すわ。」
「ならば、行け。」
アレスはナンナから順にリーフ、フィンと視線をやると、アルテナを囲むドラゴンライダー達に斬り込んだ。慌てて3人がそれに続くと、更に後ろから援護射撃が飛んで来る。
「味方の矢?」
ナンナが振り返ると、レスターが『勇者の弓』に次々と矢をつがえ、降下して来た飛竜の翼を射抜ていく。驚くリーフ達に、レスターは攻撃の手を緩めることなく告げる。
「パティに頼まれて……持ち場の敵をさっさと片付けて来ました。」
予定よりも持ち場に現われた敵が少なかったのも幸いした。パティからナンナの援護を頼まれて、レスターは敵を一掃するとここまで一気に馬を駆けさせたのだ。
そして、同じくナンナの援護に駆け付けた者がもう1人居た。ナンナ達の耳に軽快なリズムが響き、疲労が払われていく。
「リーン…?」
後方に居たはずのリーンが、ナンナ達に活力を注ぎ込むために前線まで来て踊っていた。
「早く行って!」
レスターが牽制しているとは言え、リーンがここに長く留まることは危険極まりなかった。
「どうして、あなたがここに…?」
「あなたの心配ばかりしていたデルムッドの代わりよ。セリス様の元を離れられない、あの人の…。」
ナンナ達が再び駆け出すと、後はレスターの為にリーンは踊り続けた。そして、レスターは親友の代わりにリーンを守りながら、リーフの行く手を阻む敵を射ち落としていく。
アレスとレスターが道を切り開いてくれたおかげでリーフはついにアルテナの眼下まで辿り着き、そして彼女は真相を確かめるべく戦場を去っていったのだった。

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